もしもしかくをウバワれたら――。そんな“もしも”をたいかんできるのが、“にっぽんゆいいつ”の「クラヤミしょくどう」。みかくにんぶったいをくちにいれては「トリにくだ!」「いやさかなだよ」「ブタじゃない?」などとしょくざいをよそうするこえがとびかう。みえないやみだから“みえた”ものとは?
【たのがぞう】 “にっぽんでゆいいつ”の「クラヤミしょくどう」では、だれもがしかいをウバワれるなかでフルコースがきょうされる。きたいとふあんをいだくひっしゃをまちうけていたのは、よそうをうわまわるおどろきのれんぞく。きょうたんをもたらしたのは、なんのへんてつもないめかくし1つだ。
●にゅうみせしたらそくめかくし。おそるおそるあるいてテーブルへ
めかくししてしょくじをたのしむレストランはいまやおうべいちゅうにある。はっしょうはスイスのチューリッヒ。しかくしょうがいしゃでもある1にんのぼくしが、しかくしょうがいしゃのこようのかくだいやりかいをめざし、1999ねんにひえいりうんえいのレストラン、「blindekuh」をかいてんしたのがそのはじまりだ。ついでドイツやフランスなどおうしゅう、ニューヨークやロサンジェルスなどほくべい、さらにオーストラリアへと“とびひ”し、「クラヤミしょくどう」がにっぽんにじょうりくした。
3つき21にちよる8じ。あかさかサカスから10ふんちかくあるき、「クラヤミしょくどう」にとうちゃく。みせのエントランスは、くろいぬのでしきられたウェイティングスペースとなっている。ぬののむこうがわからははなやいだざわめき、しょっきのすれあうおと、しょくよくをそそるいいにおいがもれており、みちなるせかいへのそうぞうりょくをかきたてる。
「クラヤミしょくどう」はシーズンごとにすうにちかんだけ“かいてん”するまぼろしのレストランだ。「こどもごころせいさくしょ」が、「おとながむいしきにしたがってしまっているルールやはじをとっはらうためのこころもち」=「こどもごころ」をひきだすきっかけづくりのいっかんとして“かいてん”。じぜんにはんばいされるチケットが、クチコミであっというまにかんばいしてしまうほどにんきをはくしている。こんかいの「はるバージョン」で3シーズンめにとつにゅうした。
しかもげんじてんでつうさん7にちかんしかかいてんしていない。ということは、このよるはまぼろしのみせをしゅざいできる、せんざいいちぐうのチャンスである。ひっしゃはてんないのようすやおきゃくさんのはんのうをありったけカメラにおさめようといきごんだ。
ところが――。「せっかくですから、きしゃさんもぜひたいけんしていってください」と、きゅうきょカメラを“はくだつ”され、あれよあれよとめかくしされてしまう。いきなりやみのせかいにほうりこまれ、まないたのうえのこいとかす。
よそうがいのてんかいにかくごをきめこむひまもないまま、こんどは「おきゃくさま、わたしのてにつかまってください。おせきまでごあんないします」と、ななめぜんぽうから、さっきまでとちがうこえが。こえのおもであるギャルソンがひっしゃのてにふれてきた。
すがるように2つのてをつかみかえした“こい”ならぬはんべそにんぎょは、あしをさゆうにうごかしてしょうがいぶつがないかかくにんしながらいちほ、またいちほとレストランのおくへとすすみ――ようやくテーブルにたどりつく。テーブルといすをなんどもさわり、かんかくをてにおぼえこませてからちゃくせきした。
ごでわかったことだが、このときすすんだきょりはわずか5メートルほど。たいかんでは10メートルはかるくあったはず……。しかいをたたれると、ここまであるくことがきょうふだとはしょうじき、おもってもみなかった。
●えいえんにつづくしょうしんしょうめいのやみ。でんたつツールはこえだけ
クラヤミしょくどうには2つのルールがある。1つはいっしょにおとずれたものどうしはかならずべつテーブルにすわらなければならないこと。しらないものどうしがコミュニケーションするためだ。もう1つは、ぜんテーブルにいっせいにきょうされるりょうりを、しはいにんのならすすずのあいずでたべはじめること。みな、いっせいにしょくざいあてをたのしんでもらおうというさんだんだ。
「こんばんは。○かけるといいます」。ひだりとなりからじょせいのこえがする。どうじにてがのびてきて、ひっしゃのさわんをとらえた。ひっしゃもじこしょうかいしててをにぎりかえす。するとこんどはむかいがわから、どくとくのイントネーションでなのるひとが。きくとフランスじんのほうだった。このじこしょうかいをとっぱこうに、テーブルかいわいではてきどなきんちょうのなか、たあいのないかいわがゆるやかにかそく。
しばらくするとソムリエらしきひとに「みぎぜんぽうにグラスがあります」とウナガサれ、グラスのいちをてさぐりでかくにん。りょうてではさむとやけにほそながい。シャンパングラスのようだ。つづいてえきたいがグラスをみたすおとがきこえた。だがあいかわらずしかいはまっくらで、なにがそそがれているのかわからない。
ここでひっしゃはあるてんにきづく。このレストランでは、ちまたにある仄くらいいんしょくてんやよるのやみのように、くらさにめがなれることがない。めをひらいても、ぶあついゴーグルじょうのめかくしにひかりをしゃだんされ、みえるのはまっくろなやみだけ。しぜんにみみ、てのひら、はな。この3つにいしきがしゅうちゅうしていく。
とおくひだりがわから、スピーカーごしに「みなさま、グラスをかさねてカンパイをどうぞ!」というしはいにんのこえがすると、いくどうおんにとまどいのこえがあがった。カンパイはよこならびの2にんぐみどうしがむかいあい、4にんのちゅうかんのいちでかわすことになる。けれどこのじてんではみな、じぶんのテーブルまえのくうかんかんかくをようやくつかんだばかり。
このおぼつかないじょうきょうで、なみなみとえきたいがそそがれているであろうシャンパングラスを、えきたいをこぼすことないゆれで、ガラスをわってしまわないていどにてきどにチンッとならさなければならないのだから、とまどうのもとうぜんだった。
しかしカンパイをしなければさきにはすすめない。そこで「△□さん、どこですか?」「あ、いたいた」などと、グラスをもっていないほうのてで、ほかのひとのグラスをもったてをさがしあて、てさぐりでたがいのグラスをゆうどうしあう。「こっちこっち」「あ、あった」。しくはっくのすえ、4つのグラスがかさなってぶじ「カンパイ!」に。
ハードルのたかい“おだい”をきょうりょくしあってクリアしたたっせいかんからみょうなれんたいかんがめばえ、かおのみえない“しょたいめん”どうしのかいわがいっきにかそくしたところでりょうりへとなだれこんだ。
2じかんきょうのフルコースでふるまわれたのは、ぜんぶでりょうり7ひんとさけ4しゅだ。その1つひとつにたいしにおいをかぎ、さわり、あじわい――はいをかわしたうんめいきょうどうたいがいちがんとなってしょくざいをよそうする。そんなこいきょうつうたいけんをみなできょうゆうしていくうち、にちじょうせいかつはけっしてみえないおおくのものが“みえてきた”。
●にくだとおもったらさかなで、カモだとおもったらブタだった
いんしょうてきだったりょうりをしょうかいしよう。まず1ひんもくのあたたかいえきたい。スープのようである。「うみのにおいがする」「コーン……ちがうな」「マジわからん」。よそうがバラバラで、くちにしてもさいごまでしょうたいがわからなかった。きゅうかくやみかくが“はたらかない”ことをつうかんするさいしょのしなとなる。
さらにみながこまりはてたのは、じぶんがたべおわっているかどうかかくにんできないてん。なにしろみえないのだ。しかもあいてはえきたい。ゆびをつっこんでたしかめることは、ていこうかんがじゃましてできない。
しかたなくスプーンをふかさらにそわせかきとってはくちにふくみ、りょうがすくなくなったとかんじたところでしゅうりょうすることに。いかにしかくがものごとのはんだんきじゅんになっているか、あらためておもいしる。
つうこんの1ひんもくにつづき、こたえがみちびきだせずにめいきゅういりになったのが3ひんもくだ。「にくでしょ」「いや、さかなだよ」。いけんはまっこうからたいりつする。スモークのつよいかおりにみかくがまぎれてしまい、さいごまでにくかさかなか、いけんがまっふたつにわかれていた。
また、ちゅうばんあたりになると、きゅうかくやみかくもたよりにならないことにごうをにやし、「さわっちゃっていいよね」「おれ、さっきからさわってるよ」と、みながさらのなかの“みかくにんぶったい”をすででチェックするようになる。
ひつぜんてきにはじまったわしづかみせんぽう。それをしせんのしんぱいがないからしゅうちしんがとっはらわれること、はしでもくてきぶつをつかめないいらだち、すっかりコウキしんおうせいなこどもにもどってしまったことなどが、さらにあとおしした。
そして、しょくざいあてかっせんがさいこうちょうにたっしたのはメインりょうりのときだ。ジューシーなにくしつにかんたんのこえがあがるとともに「ブタにくだ」「カモにくだ」と、これまた2つのいけんがきっこうする。
さいしょはだんぜんブタにくはだったひっしゃは、とびかういけんのなかにカモにくをよそうするこえもおおく、しかもじしんにみちたこわいろだったため、だんだんカモにくのようなきがしてきた。しまいには、どちらかわからなくなる。うしなったしかくぶんをおぎなおうと、ちょうかくがえいびんかするのだろうか。めがみえないと、たにんのいけんやこわいろがおよぼすえいきょうりょくがかくだんにはねあがることをはっけんした。
タイトル ないよう
カンパイ ルイ・ピカメロ クレマン・ド・ブルゴーニュ(ブルゴーニュさんスパークリングワイン)
1ひんもく 【たね〜はじまりのたねまき】 えごまのスープにごしゅるいのたねまき(ひまわり、とうもろこし、かぼちゃ、えごま、アーモンド)
2ひんもく 【よう〜めぐみのうみがしみるだいち】 しまねけんちぶさとのいわかきにくずあん ジンとライムのかおり
おのみもの ウィラメット・ヴァレー シャルドネ(オレゴンさんしろワイン)
3ひんもく 【ちょう〜めさめるきせつのよかん】 みやざきけんひのかげまち・おいかわのやまめぎょのスモークとはつがまめ(あかえんどう、だいず、あおだいず、らっかせい、そらまめ、はなまめ、ひよこまめ、レンズ、まめなど15しゅ)のサラダ かわべのクレソンをちぎって
4ひんもく 【はつ〜めぶきのはる】 ふきのとうのかおりでたけのこのグリル のびるのフリットそえ
5ひんもく(おはしやすめ) のうこうなかじつのジュース ろくしゅるいのいたずら(グアナバナ、ルロ、ブラックベリー、フェイジイア、パッションフルーツ、ミックスフルーツのいずれか)
おのみもの ウィラメット・ヴァレー ピノ・ノワール(オレゴンさんアカワイン)
6ひんもく 【なる〜みなぎるちから、みのるつぼみ】 そだちざかりはちカゲツほうぼくぶた(とちぎさん)のロースト ゆうきワインのソースをかけてさくらたいとたかなのつぼみすし
おのみもの ベリンジャー ホワイト・ジンファンデル(カリフォルニアさんロゼワイン)
7ひんもく 【ひらく〜こころとからだのかいか】 まんかいのさくらのおぼんにのったさくらもち
おみやげ 【みのる〜あなたにみのるきつきのたね】 たねぎっしりのやきかし
ここまででりょうりは6ひん、さけは4しゅでてきたが、まだなにをたべ、のんだのかしらない。そんなうんめいきょうどうたいに、「つぎのデザートでさいごとなります。みなさんマスクをおとりください!」と、しはいにん。いわれるがままいっせいにマスクをとると――さらなるおどろきがまっていた。
●めをこうそくしてこころをかいほうする、ぜつだいな“めかくし”こうか
めかくしをとると、いっしゅんのちんもくがながれたちょくごに「おもったとおりのひとだった」「そうぞうとぜんぜんちがう」と、こえのイメージとじつぞうとのギャップにたいするコメントたいかいとなる。たとえばかみがみじかめのたいいくかいけいサラリーマン。ひっしゃがそうよそくしていただんせいは、せんさいなクリエイティブけいのふんいきをかもしたじんぶつだったし、「ショートヘアのひとかとおもった」としてきされたひっしゃじしんも、どうやらこえとじつぞうにギャップがあるらしいことがはんめい。ひっしゃはロングヘアである。
さらに、しゃしんのようによざくらのはなばたけにうずもれたおしながきでこたえあわせをしていくと――なんと2ひんもくのカキいがいは、つけあわせをふくめ、よそうがあたっていたりょうりがかいむであることがわかった。にくかさかなか、アカワインかしろワインか。ふだんならまちがえようのないこうしたきほんのはんべつすらできていなかったのだ。しかくがいかにぜつだいなちからをもっているか、あらためてつうかんする。
だが、このよる“みえた”ちゅうでなによりうれしかったのは、めかくしをはずしたのちでもみながこころにかべをきずかなかったこと。それどころか、うちとけるあまりばなしがつきなかった。めかくしには、しかくがうけるインパクトやへんけん、しゃかいてきたちばやりせいのからなどをしゅんじにとっぱらい、こころをすっぱだかにしてしまうぜつだいなパワーがやどっているのだ。
こんかいのはるバージョンにおとずれたのは80めい。1にちあたりさんかしゃ40にんにたいし20にんものギャルソンがつき、めのみえないぶんをてあつくフォローしてくれた。そのうえアレルギーなどにもはいりょしてりょうりをサーブしてくれるから、だれもがあんしんしてさんかできた。
アレルギーにかぎらず、このレストランではにがてなしょくざいをつかわないよう、さいしょにしんせいできる。ただめかくししてたべたらじつはおいしかったというぜんれいがあるそうだ。くわずぎらいがなおるチャンスでもあるから、にがてなしょくざいしんせいをひかえるのもてかもしれない。
さて、こころのとびらをひょいとあけるクラヤミしょくどうのとびらがつぎにひらくのは、しょかの6つき。にっていやチケットにゅうしゅほうほうは、「こどもごころせいさくしょブログ」ないの『クラヤミしょくどう』でチェックするか、どうブログのメルマガとうろくをすればOKだ。
しんのきょりをちぢめたくてはがゆいおもいをしているじょうしとぶかや、かんけいをしゅうふくしたいカップルには“はだか”でぶつかりあうキッカケになるし、じぶんじしんをみうしないそうなひとや、みずからのないめんをもっとしりたいひとには、むねのおくにねむるもう1にんのじぶんにであうキッカケになる。
とじたドアをあけるかんしょくは、あなたがおもっていたよりずっとかるく、あけはなったとびらからふくかぜはあんがいきもちいいかもしれない。
【かんれんキーワード】
かいてん ことしもうすきくれないにそまった“まぼろしのこいびと”がやってくる 7わりのエンジニアが「もっとコミュニケーションをふやしたい」 だい5かいすぐにできる「かんいコーチング」 リミックスしてまきこめ! ―― ビジネスチャンスをすぐつかむための“DJりょく” ――