フランスカップのラウンド16は18日と19日に試合が行われ、リヨン、ボルドー、パリ・サンジェルマンなど、強豪がほぼ順当に勝ち上がった。だが、例外がひとつあった。5部リーグに当たるCFA2のカルクフが、リーグ1で現在4位のマルセイユを破り、ベスト8進出を決めたのだ。ラウンド32で、やはりリーグ1の強豪ナンシー(現3位)を破っていたカルクフは19日夜半、シンデレラ・ストーリーを再現してみせた。
カルクフは、ナントに程近い小さな町。ホーム・スタジアムが小さすぎるため、名門ナントのボージョワール・スタジアムで行われたこの試合で、カルクフはエンジン全開のスタートを切った。一方のマルセイユは、故障の間にマンダンダにレギュラーの座を奪われた第二GKのカラッソを起用。週末のリーグ1の試合を考慮し、準レギュラー級の選手を混ぜたチームを送り込んだ。しかし終わってみれば、相手をややなめていたことがマルセイユに災いを招いたようだ。
マルセイユがGKに戻したボールを奪ったカルクフは、7分に早くも必殺のカウンター・アタックを仕掛ける。センターサークル付近からル・ペーがロブ状の縦パスでマルセイユDFの頭上を抜き、サイドのアタッカー、エヌドワエがこれに吸いつけられるように猛ダッシュ。ひとりゴール前に抜け出したエヌドワエは、前進しすぎていたGKのカラッソを完全に出し抜き、無人のゴールに余裕でボールを滑り込ませた。
マルセイユはその後、猛攻を仕掛けるが、攻撃の歯車はどこかかみ合わなかった。16分のナスリのシュートはGKに阻まれ、38分にはやはりナスリが、ゼンダン、カボレとの連係プレーからシュートにこぎ着けるが、ボールはゴールの上に大きく外れる。続く39分、ゴール前に詰めたシセがアカレから絶妙のパスを受けるが、シセはバウンドに惑わされてひざでボールをたたいて外し、絶好のチャンスをふいにしてしまった。
後半は双方が攻防を繰り返すが、マルセイユは、すべてのボールに全力でかかってくるカルクフを前に、流れを変えられず苦しんでいた。51分にはシセが、またもチャンスボールをミス。一方カルクフのエヌドワエは、65分に再びディフェンスの裏に抜け出したが、今度はカラッソがいいタイミングで飛び出し、シュートを阻止した。双方が最後の詰めの鋭さを欠き、得点に至れないまま時間は過ぎていく。マルセイユ側には焦りが広がり、カルクフは最後までガッツと集中力を見せ続けた。そして試合は、1−0のまま幕を閉じた。
終了のホイッスルが鳴った瞬間、弱小クラブのヒーローたちと、地元サポーターたちの歓喜が、スタジアムを埋め尽くした。ゴールを挙げたエヌドワエは「最高の気分だ。精神的にも最後まで力を感じていたし、僕らは堂々と戦い抜いた」とはしゃぎなら言った。また好セーブを見せたGKのジョワネルは、「精神的にも、肉体的にも、また戦術という意味でもすべてがうまく機能していた。観客の立てる轟音や興奮で頭が混乱し、まだ起こったことが実感できない。本当に夢のようだ」と喜びを表現した。
またカルクフ監督のデニ・ルノーは「監督として、そして選手たち、スタッフ、幹部たちにとっても、これは素晴らしい日だ。今の気持ちを表す言葉が見つからない」と開口一番言った。「対ナンシー戦よりも、時間が早く流れた感じを受けた。おそらく、応援に来てくれたサポーターたちのおかげかもしれない。良いスタートを切れたことが、今日やろうと意図していたことを容易にしてくれた。弱きが強きを倒す。これがフランスカップの魅力なんだ」
一方、負けたマルセイユのパペ・ディウフ会長は「もし十分な意欲を注ぎ込んでいたら、われわれは次のラウンドに進んでいたことだろう。失望は大きい。一週間ほどの間に、勝ち上がれたはずの二つの大会からはじき出され(UEFAカップとフランスカップ)、ほとんど全裸になってしまった。ガッツと気骨を見せたカルクフは、勝つに値した。それが、われわれのチームに欠けていたものだった」と、自分のチームのふがいなさを叱責した。
マルセイユのゲレツ監督もまた、対戦相手をたたえた。「時々、勝利よりも敗北から学ぶものなんだ。今夜は多くを学んだと思う。それが何かは言わないがね。早い時間にゴールを食らい、恐怖がチームをとらえてしまった。カルクフは獅子のように戦い、われわれは単にサッカーをプレーしようと努めていた。この敗戦は、UEFAカップ敗退よりも手痛いものかもしれない。カルクフは勝利に値する戦いぶりを見せた。そして今日のわれわれは、お粗末な試合をした、と言っていいと思う」
-Kayako Kimura from France-